結局杏奈はマーニーを許し、「あなたが好きよ、ずっと忘れない」とこたえます。この日から二人が会うことはありませんでした。

元気になった杏奈のもとに、彩香が会いに来ます。彩香は持ってきた日記と、戸棚の中に隠されていた絵を杏奈に見せます。その絵の裏側には「to Marnie from Hisako」のサインがありました。

その絵は、杏奈が以前出会った絵描きの久子が描いたものでした。

娘は13歳で戻ってくるものの、結局マーニーとは打ち解けることができず、娘は家を出て結婚。しかし数年後、事故で娘夫婦は亡くなるのです。マーニーは一人残された孫娘を引き取ることになったのですが、翌年に病気で亡くなってしまったのです。

両親が事故で亡くなり、祖母にも先立たれた女の子。これは杏奈の境遇と似ていますよね。

孫の杏奈を引き取った後、祖母のマーニーは、湿っ地屋敷で暮らしていた自分の過去について杏奈に話していたのでしょう。

しかし当時まだ幼かった杏奈は、その話を忘れていました。ただ記憶の奥底では覚えていて、実際に湿っ地屋敷を見たことをきっかけに、夢となって現れたと考えられます。

杏奈がマーニーと体験したことは、杏奈が祖母から聞いた話が夢に出てきたと想像できます。

しかし全てが夢だったのかというと、謎が残ります。実際に服が汚れていたり、靴をなくしたりと、湿っ地屋敷を訪れたことがわかるシーンがあります。夢を見ていただけではありえない、不思議な体験をしているのです。

ただしこれが夢だったのか、それとも現実だったのかは、視聴者の想像にゆだねられているという感じです。

困っていた杏奈を救ってくれた老人、十一（といち）。十一は物語の終盤で、杏奈と彩香をボートに乗せて再び登場します。杏奈たちがマーニーについて話していると、十一が静かに語り始めたのです。

「青い窓に閉じ込められた可哀想な少女。遠い昔の話しだ」との発言から、十一もマーニーのことを知っていました。

おそらく十一も昔、屋敷にいるマーニーを見かけていたのではないでしょうか。

ピクニックをしたり、パーティーに参加したりと、当時のマーニーは、年の近い女の子と遊んでいたようです。

登場人物から考えるとマーニーとずっと友達だった久子が、その女の子だったと思われます。

杏奈はマーニーの姿を絵に描きます。それを見た久子は「私の知っていた女の子に似ている」と話すシーンがあります。

実際に見たことのない、祖母の子供の頃の姿を描くことができたのはなぜなのでしょうか。

ある程度の容姿は祖母からの話からもわかるかもしれませんが、そこまで似ている絵は果たして描けるものなのか。

やはり杏奈は夢だけでなく、実際に過去の祖母マーニーに会ったのかもという説が残ります。

マーニーが最後に杏奈に残した言葉を覚えているでしょうか。

「自分はもう、ここからいなくならなきゃならない。あなたにさよならしなければならないの。だからお願い、許してくれると言って」

これは、幼い孫を置いて先立つしかなかった祖母の孫娘に対する謝罪の言葉とも取れます。

また杏奈の、「許してあげる。あなたが好きよマーニー」という言葉も、目の前にいるマーニーに向けた言葉であると同時に、祖母への言葉としても通じます。

マーニーは自身の後悔を杏奈に許してもらえたことで、旅立つことができたのではないでしょうか。